甘い涙
雨に洗われた紫陽花が、やっと逢えた太陽に顔を輝かせている。
杉崎くんと付き合って1ヶ月が経っていた。
いつまで経っても、杉崎くんが寄ると逃げてしまう私に、
「めいは、俺の事好き?」
たまらず、杉崎くんが言ってきた。
「俺だって好きな子に避けられれば、傷付く。
そんな俺の気持ち分かってる?」
誰も居なくなった教室、手を掴まれ、真剣な、怒ったように言われた。
「…。」
相手が怒ってると思うだけで、嫌な動悸が激しくなる。
「あ~、ごめん、今のなし。」
杉崎くんがオドケタ様に言う。
杉崎くんに気を使わせてばっかの自分自身に嫌気がさしてくる。
「私…、杉崎くんっていっつも平常心で、何をしても全然余裕で、ドキドキしてるのはいつも私ばっか。」
鼻の奥がツーンと痛くなる。
「どうしていいのか分からなくて、オロオロするのも私だけ。
好きで、好きで、好き過ぎて、傍に来られるだけで、パニックになるのも私だけ。」
杉崎くんを見上げたら涙が零れた。
杉崎くんはとても驚いた顔をしている。
だんだん自分の言葉が頭の中に入ってくる。
顔に血が上っていく。
私は一人教室を飛び出していた。