甘い涙
6
「腑に落ちないって顔してるね。」
ドアに凭れながら言った。
「隣、座っていい?」
杉崎くんは私の了解をとると、私を左腕に抱き寄せた。
「…長い、昔話になるけど、聞いてくれる?」
私は、うなずくと、じっと杉崎くんが話すのを待った。
「俺、小さい頃から、長期の休みになるとこの家に来てた。
アメリカの家よりも、この家に居る方が好きだった。
なにより、おばあちゃんが、大好きだった。
その頃、おばあちゃん、猫飼ってた。
ものすごい、美猫。」
如何に好きだったかが分かる、優しい声だ。
「その猫が、3匹仔猫を産んだんだ。
俺、猫の出産なんて始めてで、1匹目産まれた、2匹目産まれたって、そーと覗きに行ったんだ。
小さくて、可愛くて、嬉しくてたまらなかった。
だけど、ある日覗いたら、1匹だけ様子がおかしい。
母猫が、ご飯を食べている隙に仔猫を見に行った。
その仔猫死んじゃってた。
残りの2匹も栄養状態が悪くて、俺、必死で猫用ミルクとか買いに走った。
2匹とも絶対死なせるもんかって。」
私は黙って話を聞いていた。