甘い涙

 今日から高校生となれたのも、偏に笠松さんのお蔭なのだ。
 でも、楽しそうな家族を見ると、胸が苦しくなる。
 私には、絶対手の届かない幸せそうな姿。
 ━両親が居たとしても、楽しい入学式にはならなかっただろう。
 制服をハンガーに掛けながら思う。
 「さあ、もも、掃除するよ。」
 全てを振り切る様に、私はわざと大きな声で、ベッドで丸くなって寝ているももに言った。
 ももは、四つの足をグーッと伸ばすと、勝手にやってくれ、という風に前足で顔を隠すとまた、眠ってしまった。
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