パパはアイドル♪vol.２ ～奈桜ｸﾝの多忙なｵｼｺﾞﾄ～

「正装？」


きょとんとした顔で奈桜が聞き返す。


「そ。まっ、衣装っていうのも奇抜な発想で面白いとは思うけど。初めて会う訳でしょ？相手はオンナ教師。だよね？」


奈桜は『うん。うん』と頷く。


「ここはきちんとした父親をアピールすべく、黒の冠婚葬祭用のスーツ」


「………ちょっと堅すぎない？冠婚葬祭じゃないし…」


「奈桜！」


うつ向いた心がキツイ声を出して奈桜を睨む。
その目には怒りがこもっているように見えた。


「奈桜がそんな軽い気持ちならさ、オレたちに相談すんなよ。ジャージでもスカートでも好きな格好をすればいいだろ？オレたちは…オレは、お前と桜ちゃんの事を真剣に想って言ってる。それだけは忘れないでくれ」


心の言葉を黙って聞いていた奏も一気に暗い表情になって、下を向いている。
何故か奈桜のひとことで重苦しい空気になってしまった。


「あ…、いや、そんなつもりは全然無くて…。ごめん。オレ、何にも知らないから。…そっか。そうだよな。親にとっちゃあ、家庭訪問は冠婚葬祭と同じだよな？…うん。そうだよ。一緒だ…」


言いながら奈桜は自分に『これが正解なんだ』と言い聞かせた。