パパはアイドル♪vol.2 ~奈桜クンの多忙なオシゴト~
~触れそうで・・・触れられなくて・・・~
「あっ、今日はここでいいや」
マネージャーの石田に送ってもらっている途中、疲れて寝ていると思われていた奈桜は、急に声を出した。
「起きたんですか?もうすぐ着きますから」
もう、奈桜の家のすぐ近くまで車は来ている。
『ちょっと飛ばした方がいいのかな?』と、石田はバックミラー越しに奈桜の表情を探った。
「うん。だから、ここでいい。ちょっと、歩く」
奈桜が歩くと言った以上、引き止めても無駄な事は分かっている。
でも、今夜に限っては事務所からの命令で、マンションの部屋の中に入るまで見届けなければならない。
「気分転換したい気持ちは分かるんですが、今日だけはお願いします。真っ直ぐ家に帰って下さい。まだ何があるか分かりませんから」
外をじっと見つめる奈桜の目は明らかに疲れている。
タレントの健康管理もマネージャーの仕事。
少し外の風に当たって、気持ちをリフレッシュするのはいい事だろう。
でも、やはり、事務所側に立てば、まだまだ安心とはいかない。
事務所の大事な稼ぎ頭にこれ以上、何かあっては困るのだ。
いくら手を回しても裏切るヤカラは必ずいる。
しばらく奈桜の勝手な動きを封じるのが事務所の決定事項。