パパはアイドル♪vol.2 ~奈桜クンの多忙なオシゴト~
「すみませんでした」
手短に電話を終えてソファーに戻った男性…奈桜が軽く頭を下げて微笑む。
柔らかいその表情に、思わず女性の顔もほころぶ。
『今、この微笑みは間違いなく私に向けられている』
…この勝手な思い込みが『妄想』だという事に気付こうとしない。
「いいえ。こちらこそお忙しいところを無理言いまして。お時間作って頂いてありがとうございます」
「いいえ、とんでもないですよ。本当なら無理な時間帯に来て頂いて。先生には感謝しています」
先生と呼ばれたその女性は、桜の担任の先生だった。
「あ……ご挨拶が遅れました!桜さんの担任の橘 美優希(たちばな みゆき)です。これから1年間よろしくお願いいたします」
立ち上がり、丁寧に頭を下げる。
黒っぽいミニのスーツ。
第二ボタンまで開けた白いシャツ。
肩までの黒い髪は緩いウェーブがかかっている。
シャツのボタンを二つも開ける意味…。
奈桜は全く気にしていなかったが。