パパはアイドル♪vol.２ ～奈桜ｸﾝの多忙なｵｼｺﾞﾄ～

「コーヒー『淹れる』って、『入れる』だけだろ？」


「『入れる』には違いないだろ？」


心の中で『この言い訳は失敗した』と奈桜は思った。
咄嗟にしても幼稚過ぎる。
さらに作り笑いも白々しい。
奏を傷付けずに取り繕うにはどうすればいいのか思考回路をフル回転させる。


奈桜にとって、言葉を発する事は自分を発信する事で、例え小さな事でも出来るだけ考えて言葉にする。
だから咄嗟に出た嘘などにしばらく悩む事もある。
ただ、人の心を傷付けたりしない大した意味もない会話には、余り心を砕かないが。


「そうだね。あっ、じゃあオレ、飲むから入れてよ」


ニッコリ微笑みながら奏が椅子にドカッと座る。
その笑みに裏は感じられず、奈桜の言葉を素直に受け取ったように見えた。


「えっ？あ…あぁ。うん。一杯でいい？」


「普通一杯でしょ？オレ何人分飲むの？」


『アハハ』と見つめ合って笑う。
奏が幸せなヤツで良かったと奈桜は思った。