優しく降る恋
ある雨の日。
今日も彼は、何の変哲も無い空を無表情で眺める。意識がないみたいに、じーっとそれも授業中からその間の短い放課もずっとだ。
何が面白いのか、もうすぐ1年経つのに凡人の私には全くと言って良いほどわからない。
でも、一つだけ確かなのは見る空はいつも〝雨〟だということ。
ぴちゃぴちゃ。
『萌枝、あたし帰るね』
「あ、うん。また明日ね」
『またね〜』
放課後になり、どんどん人が少なくなっていく。
本当は、彼が帰るまでずっと見ていたいけど...何の用もないのにこのまま教室に残ってちらちらと見ていたら、怪しまれて万が一問い詰められでもしたら、絶対にぼろを出す自信がある。
(あぁ、でも...)
あと、クラス替えまでに何回雨の日になるかわからないし。
見ていたいなあ。
『おーい。吉田〜お前昨日出すって言ってた課題は?』
びくり。
先生の大きな声に、肩が震えた。