傘に、手錠をかけてみる。
―今までの私ならかなり大回りに迂回してでも回避してきたあの面倒くさいシチュエーションに鉢合わせしてしまった日から、もうかれこれ2週間はたった今日この頃。

最初は酷く大人びていて、余裕そうな雰囲気だけを漂わせているのかと思えていた黒崎君は、案外そうでもなかったらしい、ということが最近少しずつだけどなんだか分かってきた。

今日だって、別に1本くらい乗り過ごしてもいいはずなのに何故か必死こいてダッシュまでして決まってこの時間の電車に乗ってきた。

しかも、今日顔をあわせて言ってきた言葉が"今日も鶴橋に会えた"。

―何故か、その言葉を思い出しただけで、一瞬前のあのむず痒い感覚が体中に伝染する。







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