傘に、手錠をかけてみる。
所謂、これが巷でうわさのギャップ萌え、という奴なのか。…萌えという感覚が些かよく分かっていないのだけれど。
まぁ、簡単に言えば彼―黒崎君は、クールで大人びて見えるのに、なんていうかこう…人懐っこいというか、ノリが良いというか、要はそんなタイプ。率直に言えば今ドキ普通の高校生。
そしてもっと言えば、元々私が避けたいと常日頃願っている系統の人種…で、あったりする。(そんなこと、口に出してもいえないんだけど。)
だから、私はあの日の翌日の早朝、電車の中でコレは漫画か何かか、と疑いたくなってしまうほどの遭遇率で彼に出くわしてしまったときには普段どおり、彼に警戒心をむき出しにしていた。
『そういえば、傘。』
ほら、と私が預かっていた彼の名前入りの黒い折りたたみ傘を鞄からヒョイと取り出して彼に渡したら、
「あー、ごめん。今日荷物多いんだよ。だから、また明日。』