傘に、手錠をかけてみる。
だって、私は冷めてるから。丁度退屈していた時間の中に私に新世界を見せてくれるオモチャに興味を持つ子どものように、ただ少しだけ叩いたり、つついたりしてみたいだけ。

だから―――
「そういや、俺の傘は?」

「…あー…ごめん、忘れた。」

もうちょっと、このままで。

「人質、なんでしょう?」

ガタンゴトン、と揺れる電車のリズムに忍ばせるように聴こえるか聴こえないか位の小さい声で私はなんでもないように言った。


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