明日が欲しい
≪エピソード 1≫
何時の間にか、桜の木の小さな蕾が膨らみかけていた。
小学校を卒業して,中学生になる私達は,春休みを利用して来月から行く事に成る中学校の近くの公園に出かけた。
その公園の中には玉藻城と言うお城が有り,結構中は広い。
ゆっくりと歩きながらソフトクリームを食べた。
天守閣まで来ると流石に疲れた私達は,ベンチに座り下を見ながら色んな話をした。
『なぁ、木村さん!将来何に成りたいん?』
『そやな!
うちなぁ,大きなったら女優に成りたいねん。
そいでなぁ,舞台なんかに立ってスポットライトの中でぎょうさんの拍手の中で歌歌うんや。
めっちゃ気持ちええやろな。
森川君は何に成りたいねん?』
『僕はな,ずっと小さい時から調理師に成るんが夢なんや。
そんで,何時かは自分のお店を持ちたいんや。』
『そう言えば森川君,家庭科の授業は何時も張り切ってたもんなぁ。
お菓子作るんやて,結構上手いし,そら行けるで。
何時かほんまに夢叶うんちゃう?』
『やけんど,僕んち貧乏やから料理学校に入る訳に行かんし,多分高校卒業と同時にどっかのお店に修行に入ると思うわ。
出来れば実家の有る関東の方にいきたいんや。』
『何言うてんねん!
料理言うたら関西に決まっとるやんか。
関東がなんぼのもんやねん!』
迂闊であった。
彼女は大阪人と言う事を忘れていた。
そう言えば良くこう言った些細な事で小学校の時も喧嘩をしていた。
『もう絶対絶交や!
関東の人間とは口きけれへん!
あぁ、鬱陶しい。
東京の人間はあっち行って!』
等と良く言われたもんで有る。
僕は唯、実家が有るからと言う意味で言っただけでもこの有様である。
関西の悪口なんて言った日には、パンチが飛んで来るのは間違い無しである。