明日が欲しい
≪エピソード 2≫
香織が中学に入り,演劇を始めて3ヶ月が経った。
少しずつ上達しているのが端から見ていても判った。
表現力が少しずつ広がって行って,声も良く通るようになった。
校内演劇部発表会と言うのが9月に有ると言う事で,夏休みも返上で部活の為学校へ通った。
かく言う私もバンドマーチの為に学校へ通わなければ行けない。
これは,夏の炎天下で重たい楽器を持って2時間以上行進しながら演奏をしなければいけない,とても過酷な物である。
お盆に有るお祭りの前夜祭に各校が集まり,町中を演奏して歩くもので,その為の足並みを合わす練習から,左右に別れたり交差したり,ターンをしたりしながら演奏する為の練習など,様々な動きをマスターする為に毎日7時間近くの特訓が続いた。
そんな忙しい日々が8月中旬まで続いたおかげで,殆ど私達は会っていなかった。
私は3階の音楽室で楽器を取り出したら,そのまま運動場へ直行だし,香織は夏休みの間ずっと体育館のステージで発表会で行う劇のリハーサルを,本番宛らの勢いで繰り返し練習していた。
だから,週に3~4度ほど電話で会話をするくらいであった。
何時の間にかすれ違い,忙しいと言う口実で電話での会話も減ってきた。