明日が欲しい




検査漬けの日々で,何時の間にか中2の夏休みも殆ど終りに近ずいた頃,彼女の精密検査は一通り終った。


いつ発病するとも判らない状態で,不安な気持ちは有るが,取り合えず明日退院出きると聞いて,香織と共に喜んだ。


彼女は,もう完治したと思っているのだろう。


しかし本当の事は未だ言ってはいけないと,彼女の両親から言われているので,退院おめでとうを連発するしかなかった。


翌日,病院に行ったら香織の両親が来ていた。


一通り荷物もまとめてあってさっぱりとした病室になっっていた。


『浩くん,遅い!

遅刻やでぇ。

何しよったん?』


いきなりの先制攻撃である。


本人は,治って退院だと思い,はしゃぎ回っている。


『悪い悪い!チョット寝坊してなぁ。

それでも急いで来たんやでぇ。

そんでも,途中工事中で道は混んでるし,渋滞抜けたと思ったらバスがパンクして,……』


『もうえぇわ!

ほんまに浩はヘ理屈ばっかり言うて,そんなん誰が信じるちゅうねん。

アホちゃうか?』


と,いつも通りの会話で始まった。


バカ言うて無かったら行き成り沈み込んでしまいそうになる。





< 43 / 62 >

この作品をシェア

pagetop