明日が欲しい
第6章・・・最後の力
ラストウィンター
高校生活の中で楽しかった想い出の一つにクリスマスが有るが、この年のクリスマスは生涯の思い出になるものであった。
高校2年の冬,12月に成って街ではあちらこちらからジングルベルや赤鼻のトナカイ等の音楽が聞こえて来る。
私はバイトをして手に入れたお金で香織へのプレゼントを買う為,デパートへと向かった。
普通の高校生なら、彼女と一緒に出掛けたりするが、私の場合はそう言うわけにはいかない。
今香織は何が欲しいかと聞くと,時間と言うに決まっている。生きていられる時間が沢山欲しいと言っている。
お金を出して買える物じゃないことは解っているが、買えるものなら買いたい。私は色んな事を思いながら歩き、気が付いたらデパートの前迄来ていた。
中に入ると暖房が良く効いていて、暑いくらいだ。
1階のフロア-を見て歩き彼女が好みそうな物を探してみた。
いくら探しても見つからない。
何が喜ばれるか,それすら解らない状態である。
2階に上がりグルグルと辺りを見渡したが,結局何を買って良いか解らない。
その時、遠くの方で微かに音楽が聞えてきた。
ホワイトクリスマスを奏でるオルゴールの音色である。
曲が聞こえる方に行って見ると,そこにはオルゴールタイプのジュエリーボックスが有った。
私はその中の一番可愛いと思ったデザインのものを手に取った。
それは,グランドピアノを形取ったジュエリーボックスである。
そこから聞こえて来る,ホワイトクリスマスが何故か私は懐かしい感じがして,それをプレゼント用に包装してもらった。