明日が欲しい




翌朝,10時の約束通り,私は彼女の家を尋ねた。


別に何処かへ行こうと言う訳ではない。


ただ,一緒にいてあげて話をするだけで良い。


残された時間を大事に使って行きたいだけである。


後どれくらい?


何時も思うのはその事ばかりである。


出来るだけ長く一緒にいて上げれたら,それだけである。


彼女の家族に新年の挨拶を済ませ,その後は彼女の部屋でのんびりと時を過ごした。


疲れを出さない程度に他愛も無い話しと,最近の出来事を話しているだけでも,時々彼女は辛そうな顔をしていた。


彼女を横に寝かせて,ベッドの横に座った私は,自分自身の小さかった時の事を少しずつ話して行った。


何時の間にか眠ってしまった彼女を見て,そっと部屋を出た。


リビングにいた妹は,


『お姉ちゃん大丈夫?』


と聞いて来たので,


『心配無いよ!

チョット疲れたから眠っているだけだよ!』


と言って安心させたが,屈託の無い妹を見ていて辛かった。


昼を回った所で彼女の家を後にした。


その足で八幡さんへ行き,彼女にドナーが見付かるように祈願した。


御守りを貰い,それを家に持って帰り今度会ったら彼女に渡そうと思った。


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