明日が欲しい




休みの日には必ず彼女の家に行き,


「遊びに来たぞ!」


と言いながら,彼女の具合を見に行った。


元気そうに見えるが,時たま見せるしんどそうな仕草が気になってしょうがない。


今日は,僕が香織の為に詩集を買ってきたのをわたした。


『これ何?』


笑いながら聞いて来た彼女に


『これ読んだら,ちょっとは女の子らしくなると思うて買うて来たんや。』


と言った。


動き回るよりジッとして欲しかったからである。


『うちは元々女の子らしいわ。

浩が知らんだけやわ。

ほんまゆうたら,メチャ乙女ティックなんやで。』


『そんなとこ見た事ないけん,信じられんの。

ほんだら,いつも女の子らしくしといてくれたら,誕生日に何でも好きなもん買ってあげるわ。』


とあぐらをかいた足を伸ばしながら言って,ついでにその伸ばした足で彼女の膝小僧を軽く突ついた。


他愛のない話を1時間ほどして,彼女が眠たくなってきたのを見計らって帰ることにした。


帰り際にお母さんが,涙を浮かべて


『香織を頼むね。』


と言って僕の手をきつく握ってきた。


とても寂しい目をしていて,黙って頷くだけしか僕には出来なかった。
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