天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(後編)
次の瞬間、天使がもう1人増えていた。

「な!」

驚きの声を上げた天使。

ピュアハートは、突き刺した相手の肉を食らい、能力をコピーすることができるのだ。

「いくぞ!」

天使の姿になったカレンは、状況が掴めていない天使の翼を斬り裂いた。




「お前は、人間ではないようだが…邪魔をするならば、死になさい」

地面に倒れている九鬼を、踏み潰そうと素足を上げた天使。

「ううう…」

九鬼は、背中を強く打ったせいで、体が痺れて動けない。

そんな九鬼の耳に、子供のすすり泣くと声が聞こえた。

「うん?」

天使も、その声に気付いた。

「まだ人間が残っていたなんて!それも、子供!純粋な魂は、我々の力になる」

「に、逃げろ!」

九鬼は首をだけを動かし、声がするほうに叫んだ。

両親だと思われる死体が、まるで盾になるかのように覆い被さり、小さな男の子を守っていた。

「先に、子供をいただくか」

天使は、九鬼を踏みつけるのを止めると、子供の方に向かった。

「に、逃げろ!」

九鬼が絶叫した瞬間、彼女の足元にある砂が盛り上がり、三体の土偶になった。

「な!」

驚く九鬼の目の前で、土偶達は一斉に、天使を攻撃を加えた。

後ろからの奇襲に、天使はバランスを失い、ふらついた。

「だ、誰だ!」

すぐにバランスを取り戻した天使は、振り向き様に、手刀からの光を放った。


「何をしてる?」

もう1人の天使の翼を切り裂いたカレンは、九鬼のもとに駆け寄り、手を貸そうとした。

しかし、九鬼は自力で立ち上がると、三体の鎧を見た。

天使に破壊されても、砂に戻り、再生を繰り返す鎧達。

「あの鎧は!?」

カレンは、眉を寄せた。

「お前達は、子供を!生き残っている人々を探し、守れ!」

そんなことを言っても、言うことをきくはずがないと、カレンは思った。

しかし、鎧の一体は、二体が攻撃をしている間に、子供を包み、全速力で飛び去っていった。

< 101 / 116 >

この作品をシェア

pagetop