天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(後編)
「天使の数が、増えて…いない!?」

ディーンは、アテネとともに移動しながら、気を配っていた。

当初は、赤の王の追撃を警戒していたが、今のところは反応がなかった。

「どこまでいくのですか?」

キョロキョロと目で周囲を観察していたディーンに、アテネがきいた。

「は!」

ディーンは素早く、空中で姿勢を正すと、

「異世界から落ちてきた人間達の魂を、防衛軍の南アメリカ支部に保管していたのですが…それをジャスティスが、取りに行き、この先の空域で合流するはずなのですが…」

ディーンは、ジャスティスの気も感じないことに気付き、南アメリカの方に顔を向けた。

「別に、魂を補充しなくても、使命を果たすのに十分な力がありますが…」

アテネは、自らの拳の感覚を確かめた。

握り締めるだけで、空間が震えた。

「!?」

その力を間近で感じ、ディーンは息を飲んだ。

(やはり、俺の選択は間違っていない!天使こそが、この世界の覇者!)

そして、フッと笑おうとした時、南アメリカの方からジャスティスが飛んできた。

「申し訳ございません。少し遅れましたが、この通りです」

翼を広げると、ジャスティスは一瞬でスピードを零にし、ディーンとアテネの前に止まった。アテネに深々と頭を下げた後、ジャスティスは光の球体を片手で、差し出した。

「これで、あなた様の強さはさらに!強大になります!素晴らしい!ははははは!」

大笑いを始めたジャスティス。

しかし、その笑いは、すぐに凍りつくことになった。

「え…」

「…」

「アテネ様!?」

ディーンは、アテネの行動に目を疑った。

「ど、どうしてです…か」

ジャスティスも信じられなかった。

アテネの右腕が、ジャスティスの胸を貫いていたからだ。

「天使は、美しくなればいけません。片腕の醜い天使など、存在してはいけないのです。恥を知りなさい。死をもって」

アテネは、ジャスティスの背中から突き出た手を握り締めた。

すると、ジャスティスは消滅した。

その代わりに、ジャスティスが持ってきた光よりも強大な光の球が、アテネの目の前にいた。


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