天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(後編)
「無駄なことを」

アテネの手の甲の傷はもう、治っていた。軽く手で払うだけで、火の玉は消えた。

「無駄なことなどない!僕は、この世界に来て、いろんな人々や魔物に会い、成長した。ここは、僕の第二の故郷だ。その故郷を!お前達の好きにはさせない」

睨み付ける僕を見て、アテネの目に哀しげな色が浮かんだ。それから、ゆっくりと彼女は力を抜いた。

「あなたの攻撃も、私に傷をつけただけよ。その程度なら…私を止められない」

と言うと、アテネは一気に力を解放した。

その凄まじさは、光の速さの如く…一瞬で、地球全体を覆い尽くした。

その結果、地球の大気が息苦しくなった。



「そ、そうだ!あの力だ!」

アルテミアの両手からつくられた氷と炎の剣に、胸を突き刺されながら、ディーンは嬉しそうに笑った。

「魔王よりも、凄まじい力!俺は、あの力に魅せられた」

「…」

無言で、アルテミアが剣を抜くと、ディーンはゆっくりと地面に落ちていく。

「俺がいなくても!彼女一人で世界は滅ぶ!」

それが、ディーンの最後の言葉だった。

「そうか?」

アルテミアは、ディーンの最後を見ることなく、赤星浩一の背中を見た。



「終わりにしましょう」

力を解放したアテネは、僕を見つめ、感情のない笑みをつくった。

「終わらないよ」

僕は、優しく笑った。

そして、ライトニングソードを地面に突き刺すと、深呼吸をしてから、魔力を一気に解放した。

その瞬間、地球の大気は正常に戻った。

「!?」

アテネは初めて、目を見開いた。

「終わるのは、世界ではないよ」

僕はゆっくりと、アテネに向かって歩き出した。

「う、うわあああっ!」

アテネは叫び声をあげると、僕に襲いかかってきた。

「滅びるのは、君だ」

僕は、拳を握り締めた。


2つの拳が、交差する時…空はいきなり、曇り出した。

そして、激しい雨を地上に向けて、落とし始めた。


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