天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(後編)
「ア、アルテミアさん…。勇者っていっても」

恐ろしくて振り返れない僕の後ろからコウを描き、頭を越えて、何かが落ちてきた。

それは、週刊誌であった。

「勇者、赤星浩一!また世界を救う!そんな特集を組まれて、嬉しいだろ?」

怒気がこもったアルテミアの声に、慌てて僕は首を横に振った。

しかし、アルテミアの愚痴は止まらない。

「なのに、あたしは!相変わらず、嫌な女ランキング一位だ!さらに、娘ができたから〜おばさんになっただの!母親失格だとか!書きたい放題書きやがって!」

アルテミアの怒りが増していく。

その時、頭上から巨大な魔力を持った者が数人、島に下りてきた。

女神エミナと、新しい騎士団長達であった。

「お母様!お父様とやり合うとお聞きしまして、助太刀に参上致しました」

エミナは、僕の背中を指差し、

「特訓によって、数倍強くなったあたし達を相手に、流石のお父様も勝つことはできませんわ!覚悟なさってね」

不敵に笑った。

「…」

僕はそのままの体勢で、何も言えなかった。

何故ならば、明らかに、アルテミアの苛立ちが増していたからだ。

「いきましょう!お母様!」

エミナと騎士団長達が一斉に襲いかかろうとした瞬間、

「あたしに、娘はいない!」

アルテミアの怒りの鉄拳が、エミナ達に炸裂した。

「え!」

防御する間もなく、エミナ達は遥か彼方に飛んで行った。

「あははは」

力なく笑う僕は、エミナ達を不憫と思ったが、同情している暇はなかった。

「一番むかつくのは、その週刊誌に!あたしが、お前よりも弱いとかかれていることだ!」

「そ、そんなことで」

思わず本音が出てしまった。小声であったが、それを聞き逃すアルテミアではなかった。

「ほおー。余裕だな」

一気に、アルテミアの魔力が最大に上がった。

「ひぃ」

僕は軽く悲鳴を上げると、両手を上げながら、振り返った。

いつのまにか、アルテミアの脇には、槍が挟まれていた。

「この技が好きなんだろ?」





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