天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(後編)
「…で」

情報倶楽部の部室に戻った高坂は、コーヒーカップ片手に、パソコンの前に座る舞に訊いた。

「どうやったら、戻れるんだ?」

「知りません」

舞は、即答した。

「来たんだから、戻れるだろ?」

もっともそうな高坂の言い方に、舞は敢えて聞こえるようにため息をついた後に、答えた。

「どうやって来たのかもわからないんですよ。無理です」

「しかし、この部室の下に、こちらとあちらを結ぶ糸があるんだろ?どうにか、それを辿って」

なおも食い下がろうとする高坂に、舞はパソコンの手を止めて、背伸びした。

「う〜ん」

しばし、筋を伸ばした後、再びパソコンのキーボードに手を伸ばした後、検索文字を打った。

馬鹿を丸め込む方法。

その文字を見て、高坂は舞の肩に手を置き、握り締めた。

「こっちは、真剣に訊いてるんだが?」

「痛い!」

舞は顔をしかめた後、キーボードから指を離し、横目で高坂を睨んだ。

「う」

思わず手を離し、たじろぐ高坂を数秒睨んだ後、舞はパソコンに視線を戻し、顔をしかめながら、言葉を吐き出した。

「糸といっても、真っ直ぐ繋がっているのか、ジグザグなのかもわかりません!それにおそらく…糸といっても概念みたいなもの。辿って帰るのは、難しいと思います!」

言い方は丁寧だが、どこか怒気がこもった口調に、高坂は何も言えなくなり、そうかとだけ呟くと、肩を落とし部室から出ていこうとした。

そんな高坂の雰囲気に気付き、舞はキーボードを叩くと、椅子から立ち上がった。

「あくまでも…それは!我々人間の場合です。神レベルならば、自ら時空間の扉を開き、道を作ることができるかもしれません」

舞の説明に、高坂は小声で、そう…とだけこたえた。

何故ならば、神レベルなど、高坂のような普通の人間には、ジャンプして大気圏を越えることができるようになるくらい…無理なことだった。

「邪魔したな」

部室を出ようとした高坂の後頭部に、マウスパットが飛んできた。



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