天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(後編)
慌てて、小走りに走った高坂は、顔を上げた生徒を見て、少し驚いた。

「君は!」

なぜならば、そこに立っていたのは、生徒会の一員にして、この世界の情報倶楽部部長の妹である…香坂姫百合であったからだ。

「依頼ならば、君のお姉さんがいるのではないのかい?」

意外そうな顔をした高坂を見て、姫百合は再び頭を下げると、ため息をつき、

「姉ならば、あたしに言われる前に、部員と2人で向かいました」

頭を抱えた。

「部員と2人?」

高坂は、少し引っ掛かったが、あまり深く考えるのをやめた。

「と、とにかく!まずは、その喫茶店のある場所へ」

「わかりました」

高坂は頷くと、学生服の内ポケットにあるカードを起動させた。

これで、高坂の位置は、部室で確認できることになった。

「いきましょう」

「はい」

2人は、姫百合を先頭にして歩き出した。




その頃、喫茶店の前に到着した者が、2人いた。

香坂真琴と、輝であった。

「ここか!」

喫茶店を見上げる香坂と違って、輝はキョロキョロしていた。

「どこに?」

目の前に来ても、輝には見えなかった。

「いくぞ!」

香坂に無理矢理腕を捕まれると、輝は引きずられるように、店に向かって連れていかれた。

しかし、輝には店は見えなかった。

ただの更地に見えた。

だけど、香坂が扉を開けた瞬間、輝は目を疑った。

小さいが、喫茶店の店内にいたからだ。

「いらっしゃいませ」

カウンターの中で、深々と頭を下げるマスターを見て、輝の中にいる犬神がざわめいた。

(ま、まさか…)

まじまじとマスターを見上げたながら、輝は周囲の気配を探った。

(人間じゃない)

それがわかった瞬間、輝は後悔し、すぐに出ることを選択した。

「部長」

自分から手を離し、カウンターに向かう香坂の気を、目覚めた犬神が感じ、頭の中で警告として信号を出した。

(ま、まさか!あの人も)

輝は絶句した。


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