天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(後編)
射抜くような九鬼の強い視線に、理香子は彼女の思いを知った。

「真弓…」

しかし、すぐには何も言えなかった。

「確かに、目覚めた者の中には、人に害する者もいた!だから、あたし達は戦った!しかし、これからも、人々の中から生まれるとしたら、あたし達は!」
「心配いらない!」

九鬼の叫びを、理香子は強い断定で遮った。

真っ直ぐに、九鬼の瞳を見つめ、

「人を襲う者がいたら、駆除しょう。しかし、そのまま生きる者には、何もしない!」

最後の語尾を強めた。

「理香子…」

「人が、すべてとはいわない。あたしは、この世界に秩序があれば…今はいい。それに…」

自分で頷いた後、理香子は中島の方に顔を向け、

「あたしは、月の女神の生まれ変わりであるけども…この学園の生徒。今は、後者を大事にしたい」

微笑んだ。

「…」

中島に向ける理香子の笑顔に、九鬼はこれ以上何も言えなくなった。

数秒間、目を瞑った後、九鬼は頷いた。

「わかったわ」

「真弓」

「これで安心して、ブルーワールドにいけるわ」

九鬼は、決心を固めた。

「え」

驚きの声を上げる中島。

「真弓…ブルーワールドにいくって…」

九鬼の言葉に、理香子の全身が震えだした。

「冗談でしょ?」

「冗談ではないよ」

九鬼が微笑むと、全身を黒いオーラが包んだ。

「この魔力は!」

理香子は絶句した。

「く!」

九鬼から感じるプレッシャーに、中島の全身の毛が逆立った。

「この体は、闇の女神デスペラードが復活の為に用意したもの。彼女が、この体に宿ったら…闇の女神は完全体になれただろう!しかし!」

九鬼は拳を握り締め、

「今!この中にある魂は、あたしのもの!闇の体の中で研ぎ澄まそう!闇を切り裂く刃を!」

自らの体の調子を確認した。

「真弓!待って!」

理香子は手を伸ばしたが、闇のオーラが弾き返した。



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