天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(後編)
「終わりだ!」

しかし、背中に突き刺したはずの剣先は、自らの鎧に当たっていた。

「な!」

九鬼の体が、消えていたのだ。

「月影…」

上から声がした為に、顔を上げたレーンの目に、落下している九鬼の踵が映った。

「キック!」

避ける暇はなかった。

レーンの体に突き刺さった蹴りは、鎧を破壊した。

そして、蹴りの威力で、後方にぶっ飛びレーン。

「ば、馬鹿な…」

地面を背中で削りながら、レーンは唖然としていた。

「よ、鎧がなければ…死んでいた」

「…」

九鬼は眼鏡を外すと、レーンに背を向けて歩き出そうとした。

「待て」

胸元を押さえながら、レーンは立ち上がると、九鬼の背中を睨んだ。

「変身を解くとは…余裕だな」

よろけながらも、レーンが歩き出すと、再び鎧が身を包んだ。

「何度でも、鎧は復活する!」

「うわああ!」

「ぎゃあ!」

倒れていた2人の兵士から、悲鳴が上がった。

すると、白目を剥いたまま立ち上がり…その身を鎧が包んだ。

「もう一度!粉々にするがいい!しかしな!」

レーンは震える手で掴んだ剣を、九鬼に向けた。

「中にいる人間は、復活できない!」

そして、突きの構えで突進してきた。

少し遅れて、二体の鎧も向かってきた。

「く!」

三方からの攻撃に、九鬼は顔をしかめた。

再び月影になる余裕がなかった。

それほど、レーン達は速かった。

ギリギリのタイミングで、かわすしかない。

九鬼は、覚悟を決めた。

「まったく〜相変わらず、甘ちゃんね」

レーン達よりも速い影が、九鬼の間合いに一瞬で入ってきた。

「え」

驚く九鬼に、飛び込んできた影は言った。

「後ろ!」

「!?」

反射的に、九鬼は後ろから向かってくる二体の足下に、蹴りを入れた。

バランスを崩した二体に、間髪を入れずに投げ技に入る九鬼。

空気投げとも言われる技に、二体は背中から地面に激突した。

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