天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(後編)
「ウムム」

艦長は唸り声を上げると、周囲を睨んだ。

「な!」

他の船の守りについていた戦闘機のパイロットも、その様子に絶句した。

「艦長!」

オペレーターから、カードに通信があった。

「心配するな」

艦長はそう言うと、通信を切った。

「ここは落ちんよ」

そして、フッと笑った。


「きぃぃ!」

さらに上空では、飛び回る魔物の数が増え、海中に黒い影も増えていた。

「艦長!」

甲板にいる兵士達が、叫んだ。

「…」

艦長は無言で、目の前の魔物を見上げながら、剣を下ろした。

その行為は、敗けを認めたものではなかった。

「…来た」

にやりと笑った艦長の目に、スライドするように首から真っ二つになる蛇の魔物の様子が映る。

同じような事態は、残りの四匹にも起こった。

血を噴き出しながら、海面に倒れる蛇に似た魔物達が、水飛沫を上げる中…1人の少年が、甲板に着地した。

そして、少年が真っ直ぐに姿勢を正す頃には、他の船を襲っていた魔物達の動きが止まった。

(王だ)

(王だ)

(王だ)

魔物達の思念が、アッシャーに集まる。

(赤の王だ)

その思念からは、戸惑いよりも…圧倒的な恐怖を感じられた。

「やはりな」

艦長は、甲板にどこからか現れた少年を見つめた。

少年の名は、赤星浩一。

防衛軍の切り札であった。

静けさが戻った海上に、戦闘機の音だけが響いていた。

「きええ!」

しかし、それでも甲板に降りていた魔物達が、恐怖から威嚇を始めた。

赤星浩一は、魔達を見ずに、ただ…甲板に佇んでいた。

その殺気のなさに、下級の魔物達が海中や空中から、赤星浩一の周りに集まってきた。

それでも、赤星浩一が動くことはない。

艦長達を無視して、本能的な恐怖から、赤星浩一だけを攻撃しょうとする魔物達。

「どけ!」

その時、海中から水柱が上がり、その中から現れた魔物が、甲板に着地した。

「貴様らでは、相手にもならん」

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