天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(後編)
「は!」

気合いとともに雲の上から放れた雷撃は、あらゆるものを破壊するはずだった。

しかし――。


「な!」

上空から撃った女神も、甲板から離脱した魔神達も、凍りついた。

上空に、人差し指を突き上げた赤星浩一の指先で、空雷牙は止まっていた。

それだけではない。

一瞬で吸収されると、甲板上…いや、この海域に静けさが戻った。

「い、今の攻撃を、指先だけで」

甲板からジャンプして、海に潜る寸前のアクアメイトは、今起こったことが信じられなかった。

「こ、これが…赤の王」

空中に浮かぶライカと業火。

その二人に向けて、赤星浩一はただ、指先を向けた。

「ライカ!業火!」

赤星浩一の行動に気付いたアクアメイトが、叫んだ。

しかし、遅い。

空雷牙を圧縮した光線が指先から放れ、ライカの体を貫いた。

「ぐわっ!」

完全に炎化する間もなく、胸に穴が空いたライカを見ることもなく、赤星浩一が指先を横に動かすと、光は横凪ぎの斬撃になった。

そばにいた業火も、斬り裂かれるはずだった。

突然、ライカと業火の間に、水飛沫が上がり、硬化すると壁となった。

光線は、その壁も簡単に切り裂いたが、コンマ数秒の余裕を、業火に与えた。

一瞬で、テレポートすると、光線の斬撃から逃れることができた。

「ライカ!」

雲の上から、急降下で下りてきた女神が、赤星浩一に襲いかかった為、光線の追撃は魔神達に放たれなかった。

「よくも!ライカを!」

女神の蹴りやパンチを、赤星浩一はほとんど動くことなく、上半身の動きだけでかわす。

「そ、そんなはずが!」

スピードを増した女神の攻撃は、人の目ではとらえることもできない。

それなのに、当たらない。

「くそ!」

女神の攻撃のスピードが、落ちた。

それは、力を込めた一撃を放つ為であったが、一瞬の隙を見逃す赤星浩一ではなかった。

前に突きだすように、ノーモーションで真っ直ぐに出された蹴りが、女神の腹に叩き込まれた。

その蹴りは、カウンターのようになり、女神を吹っ飛ばした。

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