天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(後編)
「クッ!」

実世界における隠岐の島にある孤島に、1人の男が逃げ込んでいた。

ジャンスティン・ゲイを代表者にした新生防衛軍で、副司令を勤めていた男であった。

しかし、今はただの逃亡者であった。

事の次第は、職員の命を救うために、実際的には、クーデターであることを隠し、本部のトップの首のすり替えただけという形になっていた。

ただしジャスティン・ゲイの名前は、民衆に絶大なる人気がある為に、幽閉してもなお、象徴として残っていた。

副司令官であったドレイク・スチュワートは失脚し、軍の一兵として残ることを迫られたが、それを拒否した。

その為に、命を狙われたが、部下の安全を考え、敢えて捕まり…処刑される前に、逃亡したのであった。

クーデターはあくまでも、防衛軍本部内だけで終わり、指揮系統はそのまま残ることになった。

末端で働く兵士や科学者の生活が、すぐに変わることはなかった。

だが、ドレイクは見抜いていた。

民衆を人質にして、ジャスティンを幽閉したやつらが、人々の生活を守れるはずがないと。

さらに、新副司令官となったディーン・ノアのバックには、ある人物がいると言われていた。

彼の名は、マーティン・ガレイ。

民族至上主義者として有名であった。

マーティンが思う人間は、ブルーアイズだけである。

(そんな人間が、人々を導ける訳があるまい)

ドレイクは、まず人質にされている人々を助け出した後、ジャスティンを救い出そうとしていた。

いや、人々が助かれば、自力で脱出するであろうと思っていた。

ジャスティン・ゲイは、素手で騎士団長に勝つことのできる唯一の人間であったからだ。

「うん?」

島の岩壁から、本部の方を睨んでいたドレイクの胸ポケットの中から、電子音が鳴った。

カードに情報が、飛び込んできたのである。

自らのカードは、捕まる時に、差し出していたが…一般兵に配布するカードを一枚、くすねていたのであった。


< 53 / 116 >

この作品をシェア

pagetop