天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(後編)
「な」

その攻撃をかわそうと、顔を上げた俺は、中年の男が笑っていることに気付いた。

(もう一人は!?)

男達の後ろには、いない。

「貰った!」

俺が、前に気をとらえる間に、真後ろにテレポートした女の居合い抜きが、背中を襲った。

「あのなあ〜」

俺は、頭をかいた。

「馬鹿な」

中年の男は、空中で目を見開いた。

女の攻撃は当たらず、攻撃目標が目の前から消えたからである。

「テレポートを使えるのが、お前らだけと思うなよ」

4人の俺が、4人の剣士達の横にした。

そして、次々に拳を叩き込むと、4人はその場で崩れ落ちた。

「やれやれ」

ため息が出た。

あまりのスピードの為、残像が残ったのだ。

本当に、気を失っていることを確認すると、再び俺は本部に向かって歩き出した。

(それにしても…似ていた)

4人の顔は、実世界にいる親戚達にそっくりだったのであった。


「何を遊んでいた?」

ピアスから、溜め息混じりのアルテミアの声がした。

「普通の人間を、殺すのは…」

と言いかけて、俺は振り返ると、倒れている4人を見た。

(やつらは、容赦なく殺そうとした)

一般人に見える俺に、警告を発することなく、命を狙う。

(今の状況がわかるな)

俺はフッと笑うと、歩く速度を速めた。





「侵入者が、警戒地区を突破しました!」

本部内の司令室内で、オペレーターの言葉を聞いたヤーンは、にやりと笑った。

「彼らを倒したんだね。興味深い」

一番中央の椅子に座り、ヤーンは髪を人差し指で巻きながら、隣に立つ幾多を見た。

「…」

幾多は、口を閉ざしていた。

ヤーンは軽く肩をすくめてから、オペレーターに告げた。

「彼を通して上げて!試してみたくなったよ」

ヤーンは口許を緩め、

「特別かどうかね」

目の前の巨大モニターが写し出された…接近してくる俺を見つめた。

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