天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(後編)
「わ、私は新しい人類!特別な人類!」

「く、くそ!」

俺は、ヤーンの傷を治す為に、治癒魔法を発動しょうと手を伸ばし、走り出した。

「え」

その目の前で、ヤーンは絶句していた。

血は止まることはなかったが、別のものに変わっていた。

黒い煙に。

「そ、そんなは、ずは…」

ヤーンの体自体も、煙に分解され、消えていく。

すると、その中から、光る球体が飛び出してきた。

球体は、地上数メートルのところで止まると回転し、ヤーンだった煙を吸収し、黒に変色した。

しかし、回転を重ねる毎に黒は薄れていき…やがて、光に変わると、今度は白に変わった。

白は皺をつくり、物体のようなボリュームが出来き、大きくなっていく。

そして、羽毛で包まれたような巨大な玉になると、キャベツの皮をめくるように、外に広がっていった。

「あ、あれは!」

今度は、俺が絶句した。

皮は、二枚の翼に変わり、その中から全裸の男が、姿を見せた。

「て、天使!」

アルテミアの忌々しそうな声がした。

「アルテミア?」

「赤星!攻撃しろ!今なら!」

アルテミアが叫んだ。

「うん!」

姿こそ神々しいが、俺は天使から邪悪なものを感じていた。

邪悪というよりも、純粋な悪。

「フン!」

気合いを入れた横凪の斬撃は、天使を斬り裂いたはずだった。

「無駄だよ」

生まればかりの天使は、俺に向かって微笑んだ。

「光は、光を斬れない」

「な!」

シャイニングソードは、天使の体に触れると、物凄い力で跳ね返され、2つの物体に戻った。

「く」

俺は跳ね返された勢いを利用して、天使から離れた。

「天使だと!?どうして、こんなところに!」

俺からするアルテミアの声に、天使は驚くことなく答えた。

「救いの為さ。我々が現れるのは、人間が救いを求めた時さ」

天使は笑い、

「苦しみ、痛み、妬み…恨み。それらが限界を越えた時、人間は神を求める」

天を仰いだ。

「数万人の祈りが、届いた時…神は降臨する」

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