天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(後編)
「兄様が、死んだか…」

大月学園の理事長室で椅子に座りながら、密かに送り込んだ密偵の報告を聞くと、レーンはカードの通信を切った。

念のため、自分のカードを使ってはいなかった。

「レーン様」

「フッ」

軽く笑うと、レーンはそばに立つ女に、指先で摘まんだカードを返した。

それから、椅子を回し、後ろにある窓に目をやった。

しばし無言になるレーンの横顔を、女は見つめていた。

「雪菜」

突然のレーンの声に、女はびっくと身を震わせた後、姿勢を正した。

「はい」

そして、凛とした声で返事をした。

「…」

また数秒、黙った後、レーンは口を開いた。

「俺は…ヤーン兄様が好きだったよ。向こうは、そんなに好いてはいなかっただろうけども…」

悲しげに、再び笑うレーンに、雪菜は慌てて言葉をかけた。

「そ、そんなことはありません。ヤーン様もきっと!」

「いいんだよ。雪菜」

レーンは、椅子から立ち上がると、雪菜の肩に手を置き、微笑んだ。

「レーン様…」

「すべては、俺のせいだ。兄の結末も…君達の運命も」

レーンは顔をふせ、雪菜の肩を握り締めた。

しかし、その手は小刻みに震えていた。

「レーン様」

雪菜は、そんなレーンの腕を掴むと、レーンの目を真っ直ぐに見つめ、

「あなたが悪くはないのです。だから、罪を認めないでください。でないと…」

すぐに顔を背けた。

その瞬間、雪菜の背中から翼が飛び出してきた。

「わ、わたしは!」

雪菜に翼が生えると同時に、三体の土偶に似た鎧が、レーンのもとに集まってくる。

「俺は…罪を認めるよ。だけど」

レーンが顔を上げた瞬間、雪菜の背中に生えた翼が斬りとられた。

「やつらの糧になるつもりはない」

レーンの目に、殺気が宿る。

「それに、君を失うこともできない」

そう言うと、レーンの目から殺気が消え、寂しさに染まった。

「レーン様!?」

その瞳の色を見られないかのように、レーンは雪菜を抱き締めた。


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