天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(後編)
「貴様ら!」

パニック状態になった人々達に渇を入れようとするギラの前に、1人の中年のおっさんが姿を見せた。

「イヒヒヒ」

怪しい笑い声を発しながら、手を揉んでいる男を見て、ギラは顔をしかめた。

「あんた…騎士団長ギラさんだよね」

「?」

「俺と取引をしないかい?俺を逃がしてくれれば、もっと人が沢山して、襲いやすいところを紹介するからさ」

その言葉を聞いた瞬間、ギラは男の横を通り過ぎた。

「フン。クズが」

鼻を鳴らし、歩き出したギラの耳に、銃声が響いた。

「!」

振り返ると、鎌の魔物に後ろから首を跳ねられた兵士の手から、銃が落ちるのが見えた。

「うわああっ!」

兵士とギラの間にいた男の胸から血が噴き出していた。

どうやら、背中から銃弾が貫通したようであった。

痛みに絶叫していた男の体に、変化が見えた。

風船のように膨らんだと思った瞬間、破裂したのだ。

「ウフフ…」

破裂した男の肉片が、床に落ちる中、含み笑いがこだました。

「貴様は!」

ギラは絶句した。


「クズだなんて…。でも、だからこそ、救えるのさ。人間を」

「ば、馬鹿な!」

ギラの目の前に、生まれたばかりの天使が立っていた。

「救いの時間です!」

深々と頭を下げた後、天使は翼を広げた。

次の瞬間、翼から羽毛が放たれ、倉庫内にいた人々に突き刺さった。

「させるか!」

ギラは左手を突き出すと、電撃を放った。

「遅いです」

ギラの攻撃が当たる前に、羽毛は人々の命を吸い取ると、天使の元に戻ってきた。

「それに、この程度の攻撃で、私を」

天使は指先で弾くと、電撃をギラに跳ね返した。

しかし、もうギラはいなかった。

「?」

驚く天使の左頬に、ギラの拳が突き刺さった。

吹っ飛んだ天使は床を転がりながら、何が起こったのか、理解できなかった。

「わ、わたしの顔に!生まれたはがりのスベスベの肌に!」

すぐに立ち上がった天使の周りに、魔物達が集まってくる。
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