ボーイフレンド
いくら徹ちゃんと仲が良いと言っても、二人で会ったことはなかった。
だって、大学生の男女が二人きりで会うって、特別なことだ。
徹ちゃんは決して鈍感でも無神経でもない。
女の子とも付き合ったことがあるだろうし、ノリもいいし顔もまあまあかっこいいから、たぶん、モテる方だと思う。
今までの飲み会で、なんとなくだけど、女の子の扱いに慣れているって感じたことがあった。
そんな徹ちゃんだからこそ、考え無しにあたしと二人きりで会ったりしないだろう。
人に見られたら噂になるし、ただの友達だって否定しても信じてもらうのは難しい。
徹ちゃんは、そう思われてもいいの?
少なくとも、今は付き合ってる人がいないようだけど。
あたしも彼氏がいるわけじゃないから、あたしと徹ちゃんが二人きりで会うことには、何の問題もない。
でも……。
こんなこと考えるの、なんだかいやらしい感じがするけど、もし仮に徹ちゃんにその気があったとしたら、あたし、のこのこついて行っていいのかな。
二人きりで…とはっきり確かめたわけではないけど…会うことをOKすることって、それ相応の意味を持つ、つまり、あたしは思わせぶりな態度を取っていることになる。
だからといって、断ったりしたら、自意識過剰みたいで嫌だし……。
……やっぱり、行こう。
徹ちゃんの誘いを断ったりしたくない。
それに、いつもと違った徹ちゃんの様子が心配だ。
あたしはそのまま何も聞かず、待ち合わせ場所を訪れた。
やっぱり徹ちゃんは一人で、あたしと落ち合うとすぐに歩き出した。