引っ込み思案な恋心。-2nd
「ふう。何とか柚を明るいうちに送れたな」
「でも拓が帰る頃には暗くなってるんじゃない?」
「俺は大丈夫だろ。とりあえず柚の安全が大事だし」
「…ありがとう」
この手を離すと、今度はいつ拓に会えるんだろう…?
そんなことを考えてしまって、手を離すのを躊躇してしまう。
すると、拓の方からゆっくりとつないでいた手を離してきた。
「…俺達、また近付けたよな……?」
「うん」
「これで合宿頑張れる気がする。柚も夏期講習、頑張れよ」
「うん。またメールするね」
「おう。じゃー、またな」
『また近付けた』……。
そうだね。
少しだけだけど、拓に対する拒絶がなくなった気がする。
こうやって、ちょっとずつでもいいから拓と近付いていけたら……
頑張ってどうにかなる問題じゃないかもしれないけど、気持ちの準備……、できたらいいな。
拓の背中が見えなくなるまで見送って、私は夕日で赤く染まる自分の家の玄関のドアを開けた。
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