引っ込み思案な恋心。-2nd
もちろん私も……間接的にだけど、教室で何度かその話を耳にした。
でもななっぺに最初に聞かされていたから、心へのダメージは思ったより少なかったと思う。
「別に…、ウワサはウワサだから。それに拓は断ったんでしょ……?」
「まあ…、そうだね。振られちゃった。でも私、諦めてないから。私はあなたよりも瀬川の彼女としてふさわしいと思ってるし、クラスも部活も一緒だからあなたより近い関係だと思ってる」
「関係ないよ……」
「そうかな?……あのまま杉田さんと瀬川がケンカしてくれてたら良かったのに」
「え?もしかして…、あの時私達が話してないって知ってて、拓に近付いたの……?」
松沢さんが拓に急接近してきたのは、ちょうど私達が気まずくて話せなくなっている時期だった。
そのこと知ってて…、拓に近付いたの?
すると松沢さんは静かに目を閉じて、ゆっくりとうなずいた。
「ちょうど1年前かな。体育祭で初めて瀬川の走りを見たの。その時から、瀬川のことが気になってた。アスリートとしても、男としても……」
「え……」
やっと松沢さんが私の顔を見てきた。
その表情は、少し切なく見えた。
「それから色々瀬川のこと調べてたんだ。初めは細井さんと仲が良くて、これは無理かもって思ってたけど、3学期になると杉田さんと付き合い始めたってウワサが広まって…」