引っ込み思案な恋心。-2nd
「そういえば拓も体育できるのに、運動部とか入らないの?」
「え?俺?」
拓は体育祭でリレーの選手に選ばれるほどめちゃくちゃ足が速くて、運動神経がいい。
運動関係がほとんどダメな私からしてみたら、とてもうらやましいと思ってしまうほど。
だから前からどうして部活に入ってないのか疑問だったんだけど、せっかくあゆの部活仲間の話題になったから、ついでに聞いてみたくなった。
「ああ…そうだな、マサ達とつるんでるのが楽しかったから、ついつい遊びに走っちまったからなぁ」
「確かに、運動部だったらほとんど遊べない部もあるみたいだしね」
「最近はこうやって柚と帰るのが楽しみだから、帰宅部で良かったと思う事が多いな」
私も…、帰宅部で良かったと思う。
私はなかなか部活に入る勇気がなくて帰宅部になっちゃったんだけど、拓と付き合い始めて一緒に帰るようになってからは、放課後になって拓と帰るのが楽しみになった。
通学路に沿うように、桜並木がピンクで彩られている。
見上げると、満開の桜の花の間から、晴れ渡った青い空が見え隠れした。
柔らかい日差しが降り注ぎ、暖かい風が私達の頬をなでる。
そんな通学路を、こうやって拓と二人で手をつないで歩けるなんて、私はとても幸せだと思う。
拓とは別々のクラスになってしまったけど、この幸せだけはずっとずっと続いてほしいと………
心からそう思った。
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