引っ込み思案な恋心。-2nd





「きっと、あなたがこの賭けに負けていても、私にはあなた達を引き裂けなかったと思う。想いが強すぎるもん。周りは色々言ってるけど……、本人達はお互いを理解した上で真剣に付き合ってるんだね。それがよく分かったよ」



「松沢さん……」



「あなたは…、周りが思っているほど弱い存在じゃない。むしろ、私よりも気持ちが強い人なんだと思う。周りのウワサに振り回されて浮かれていた私なんかよりも……」






それだけ言った後、松沢さんは私のベッドの周りに引かれていた白いカーテンを少し開いた。





その隙間から見えた窓を通して、雲一つない初秋の空が見えた。






「…じゃあね。お幸せに」






最後の松沢さんの声が聞こえた後、松沢さんはカーテンの向こうに消えて行き、その少し後に保健室のドアを開け閉めする音が聞こえてきて、また静かな空間が戻った。






「…松沢が転校するのか…。俺マジで知らなかったし。来月ってすぐじゃん」



「松沢さん…、元から転校覚悟でこの賭けを私に…?」



「そうかもしれないな。しかし昨日、柚とそんなコトがあったなんて、全然知らなくて驚いたな…」



「ごめん…、言えなくて」



「いーよ。柚の気持ちはよく分かったから」



「しかも私が倒れてまた迷惑かけちゃって……」



「迷惑とか思うなよ」






そんな拓の声の後、また視界が暗くなった。





だけど今度は、ちゃんと意識がある。





かすかに太陽の匂いをまとった、拓の香りがする。





ああ……私、また拓に抱きしめられているんだ…。





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