引っ込み思案な恋心。-2nd
「A高だったら県立だし、親もたぶん許してくれるよな。俺もA高で親に話してみるから」
「ありがとう、話を聞いてくれて」
「当たり前だろ。俺は柚の彼氏なんだから。俺が柚の夢を応援しなくてどーすんだよ?柚だっていつも会場まで来て俺の走り応援してくれてんじゃん?」
「うん…、そうだね」
私の心の中で芽生え始めた、小さな小さな目標。
拓に支えられて、少しだけ芽が大きくなった気がする。
私の声の力……、どこまで届くのか試してみたい。
「確かに、柚がそんな仕事に憧れを持ったのは意外な感じだけどな。最初に進行やるって言った時、すげー不安がってただろ?」
「うん。リハーサルの直前までその気持ちが取れなかったんだけど…、私の声でみんなが動く姿を見てたら、だんだん面白さを感じるようになっちゃって」
「なるほどな〜。俺そんな風に考えたコトなかったかも。だいたい俺の言う通りにみんな動くし」
「拓は友達多いから……」
「それにすぐ仕切るからだろ?この前細井にも『仕切りたがり』とか言われたし」
「はははっ」
私が軽く笑うと、急に拓に後ろから抱きしめられた。
背中があったかい…。
そして、私のお腹に回された拓の手に自分の手を重ねた。
静かなんだけど…、穏やかな空気が流れる。