引っ込み思案な恋心。-2nd





「杉田もポスト入れときゃいーんじゃねえの?話したい事、紙に書いて。どうせ俺の漫画取ると思うから、確実に見るとは思うけど」



「あ、そっか。…うん、そうしてみる」



「それじゃ、俺帰るから」



「ありがとう…」



「礼を言われるようなことなんてしてねーし。じゃーな」






そう言った後、倉本くんは少し早足で帰って行った。






私はそんな倉本くんの後姿を少しだけ見送った後、持っていたカバンからメモ帳とシャーペンを取り出した。








…そうだよね。



拓が今、私と話さない、話せないって思っているなら、とりあえず私の考えていることだけでも伝えた方がいいよね。






そうしなきゃ、これから帰ってテスト勉強しようにも、気が散って上手く集中できないかもしれない。







私は拓の家のポストの前でしゃがみこんで、メモ帳にシャーペンを走らせた。









『拓へ




昨日はぶったりしてごめんなさい。


あの時はどうしたらいいか分からなくなって、そんな行動を取ってしまいました。


ちゃんと話し合いたいと思っています。


また二人で楽しく帰りたいと思っているから。


もし落ち着いて時間が出来たら教えて下さい。




          柚より』











机の上で書いたわけじゃないから、汚い字になってしまったけど…





拓、ちゃんと読んでくれるかな…?






私は立ち上がり、でき上がった手紙を丁寧に四つ折りして、拓の家のポストの中に入れた。








…拓と、きちんと話せますように。




私の想いが伝わりますように。








拓の家の2階…、誰もいないであろう拓の部屋の窓をしばらく見上げて、私はそっと、拓の家を後にした。












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