引っ込み思案な恋心。-2nd
「瀬川、早く行こうよ」
すると、私のことを一通り観察し終わったらしい松沢さんが、拓の手首を引っ張り始めた。
うそっ!?
松沢さんって、こんなに強引なの?
てか、用事って松沢さんと一緒???
どういうこと?
意味が分からないよ。
「ねえ拓…、用事って?」
とにかく今は松沢さんに負けるわけにはいかない。
あかねちゃんに言われた通り、彼女として堂々としてなきゃ。
そう思い直して、私は松沢さんに引っ張られてるのとは別の拓の腕を掴んで聞いた。
「ああ…、ちょっと今は言えない」
「どうして?」
「後でちゃんと話すから。待っててもらえないか?」
「無理だよ。これ以上待てないよ」
「無茶なコト言ってるのは分かってるけど…、ホント悪い」
「え……」
すると突然、松沢さんが掴んだ方の拓の腕が勢いよく引っ張られて、その力で私が掴んでいた拓の腕が外れた。
そして一際大きい松沢さんの声が飛んできた。
「ちょっと瀬川っ!今日しかないんだから、早く行こうよ!!」
「ああ…行くから引っ張るなよ、松沢。とにかくちゃんと話すから。ゴメンな、柚」
「あっ、ちょっと拓!?」
そのまま松沢さんに手首を引っ張られながら、拓は下校する生徒の波へと消えていってしまった。
な、、、何、あれ?
松沢さんと一緒の用事って何?
もしかして拓…、本当に私よりも松沢さんのこと、、、選んじゃうの?
もう…、そうとしか思えないよ。