はつこい―君が笑ってますように。―
野球チームの練習に行くと、
男の子たちは私をお姫様のように扱ってくれた。

多分、私が監督の娘だから。



けれど、あまり近づいてこない子もいた。



田野康行(たの・やすゆき)くんという子だった。
私より2才下の男の子。


練習ではすごく活発なのに、
休憩中に私が行くと、いつも途端にしおらしくなってしまう。



「私、嫌われてるのかな?」

東くんに聞くと、

「むしろ逆、かな?」

と言われた。

私は意味がわからなかったけれど、
東くんと一緒にいられるなら、何でも楽しくて、
いつもいつも東くんと一緒に、練習や試合を見に行っていた。



けれど、そんな日々を二年くらい過ごした
13才の冬のある日。
珍しく田野くんが話しかけてきた。
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