オカシナふたり
 膝の傷口に沁みるシャワーを浴びながら、カズキは自分の身に降りかかった不幸と自分の身に訪れた幸運を同時に噛み締めていた。

 トモカには秘密にしているのだが、カズキがトモカとぶつかった三叉路に居合わせたのは――『家出』の途中であの場所に通りがかったからだった。

 夏休みに入り初日、母と……自分の父親ではない男との生活に居心地の悪さを感じたカズキは『家出』することを決意した。

 家を出て、行くアテなどは無かったのだが……それでもカズキにとっては自分の居場所が無い自宅に居るよりも、多少の苦労はあったとしても自宅以外の場所へ――母と……その彼氏である男の目の届かない場所へと消えてしまいたかったのだ。
< 42 / 70 >

この作品をシェア

pagetop