オカシナふたり
 トモカと隣のオバサンが玄関先で鎬を削るようなミッションをそれぞれに遂行している頃――。

 カズキはトモカの家にある冷蔵庫の大きさにド肝を抜かれていた。
 
――何と表現するべきか……。

 一般家庭にあるべき大きさでは無かったからだ。

 カズキは三人で生活する家で、小学生の身の上ながら家事のほとんどをやらされていた。
 食料品の買い出しなどは母とその彼氏が行ってはいたものの、実際に食事の準備を整えるのはカズキがやらされていたのだ。

 カズキ自身は他の家庭の事情はほとんど知らないから分かってはいないだろうが……実はカズキの家事能力は一般の家庭の主婦と比較してもまったく遜色ない。

――普通の子供としての幸せを、いかに今まで享受できていなかったかの証でもあるのだが……。
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