僕のミューズ
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ズンズンと心臓に響く音がフロアに満ちていた。
ファッションショー用に作られたステージ。広い観客席にはどこかのコレクション並の女の子や関係者が詰まっている。
テレビカメラやファッション雑誌の記者、アパレル関係者もちらほら見えた。
それだけ、このショーはクオリティが高く注目されているのだ。
そういう人種を見るにつれて焦りは増長する。
…とにかく立ち止まらず、こけず、最後までランウェイを歩いてくれればいい。
最初は彼女なら完璧にこなしてくれるという自信があったが、よく考えたらそれは何の裏付けもない自信。
あのあかりですら、リハーサルは真剣にランウェイを歩いて何度も微調整をしていたのだ。
素人で、リハーサルも何もなく、このスポットライトが当たりまくっているランウェイを歩けるのか。
無理矢理あかりを来させた方がよかったかもしれない。
若干の後悔を覚えつつ、ただ刻々と過ぎる時間を待つ。