僕のミューズ
相変わらず芹梨とは一緒にご飯を食べたり、たまに買い物に行ったりしている。
所謂デートを重ねているわけだが、どうにもこうにもあと一歩が進まない。
夏だし、イベントも沢山あるから何かしら誘おうと思っていたところの、海だ。
海。夏の太陽の下、普通のアウトドアとはまた違う解放感。
何かある予感。
「妄想禁止ー」
不意に紺に声をかけられて、俺ははっとして気を引き締め、「何でもねーよ」と意味のわからない返事をした。
そんな俺を見ながら、意味深な笑顔の紺。
「…何だよ」
「いや、夏だなーと思って」
にやついた紺の顔を一瞬睨み、俺は自分の携帯で来週の予定を確認した。
外でのびのびと輝く梅雨明けの太陽。
さんさんと降りそそぐ日差しと少し気の早い蝉が、夏の始まりを歌っている。
今までの夏の中で、一番暑い夏が始まる予感がしていた。