僕のミューズ
マキシ丈のスカートは、オレンジのタイダイ柄。
いつもストレートかウエーブのかかっている髪は、今日は頭のてっぺんできれいなお団子になっている。
いつも見えないうなじは日に焼けていなく白いままで、心拍数の向上に拍車をかけた。
ふと芹梨の視線がこっちに向き、慌てて反らす。
が、何だか避けたみたいで、俺はなるべく平然を装いながら、もう一度芹梨に視線を向けた。
真っ直ぐ俺を見る芹梨は、ニコッと微笑む。
えくぼがいつも以上に眩しい、なんて、暑さのせいにしても言えない。
『おはよ』
「…はよ、」
まだ挨拶もしていなかったから、芹梨は笑顔で手話をした。
俺も同じ様に返したら、目をより一層細めて、窓の外に顔を向ける。
すっと綺麗な透き通るうなじが、夏の青空の光を吸収している。
少しだけあけた窓から侵入する風が、芹梨の後れ毛をふわふわと揺らす。
水着の前に、こんなにドキドキしていて大丈夫なのか俺は。
赤くなった顔は夏の暑さのせいにして、俺も反対側の窓から遠ざかる夏の景色を眺めた。