僕のミューズ

『手話…目立つから。なのに、遥君はいつもどこでも、ためらいなく会話してくれてて。あたし…悪いなって思いながら、何も言い出せなかった』

そう言って、躊躇いながら、困った様に笑う。


『…遥君までって…誤解、されたくなかったんだけど。でも…』
「違うよ!」


俺は芹梨の言葉を遮るために、思い切り彼女の腕を掴んだ。

びっくりした目が俺を飲み込む様に見つめる。

「…違う。そういう意味じゃない」

手を掴んでいるから、手話はできない。
だから俺は、ゆっくり目を見て言った。

「そんなん、気にしなくていいから。俺気にしてないし。気にしてないっつか、考えた事なかったっていうか…」

…そう。考えた事もなかった。

芹梨が、そこまで考えているなんて。
ちょっと考えたら、わかるはずなのに。

人一倍、周りを見る子だから。

だから、誤解を解くには、ちゃんと言葉で。

「だから、俺が言うのはそういうんじゃなくて。目立つっていうのは…芹梨だから」

芹梨の目を見て、真っ直ぐに。

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