僕のミューズ
「じゃ、圭吾バトンタッチな」
「は!?」
「俺今からバイト。可愛い後輩の為に、彼女の前でかっこよく布裁断しちゃって」
「あ、見たい見たい!」という伊織ちゃんのテンションに助けてもらい、俺は教室を後にした。
夏真っ盛りの廊下には、蝉の鳴き声が充満している。
ペタペタとサンダルを鳴らしながら、きつい陽射しに目を細めた。
つうっと首筋を汗が伝うのがわかる。
その汗を拭いながら、帰りに冷たい炭酸を買って帰ろうと門を出た、その時だった。
「はーるか」
聞き覚えのある声に振り向く。
門の前にいた女の子が、こっちに向かって手を振っている。
眉間にしわが寄るのがわかった。