僕のミューズ
「…あかり」
「へへ、来ちゃった!」
サンダルのヒールを鳴らしながら近付き、立ち止まった俺の前に足を揃える。
すっと細い足が白いショーパンから綺麗に伸びている。
同じ白いシャツはふんわりとしていたが、下の黒いキャミソールが線の細さと女性らしさを強調させていた。
あかりはいつも、自分の見せ方をわかっている。
「何しに来たんだよ」
「だぁって、遥が連絡くれないから」
だって、連絡先消したから。
と言いたかったが、これ以上関わるのも面倒だったので視線を反らして歩きだそうとした。
「あ、ちょっと待ってよ!」
そんな俺のシャツの裾を掴むあかり。
思い切りため息をつきたい衝動に駆られる。
「何だよ」
「ごめんって。遥、あのショーのこと怒ってるんでしょ?」
…当たり前だ。
思ったが、口に出さずにため息をつく。
「ほんとごめん。あたしも反省したんだって。あの後謝ろうと思ったのに、電話通じないし…」
ショーが終わってすぐに連絡先を削除した俺は、あれから一切あかりの連絡を無視していたのだ。
確かに、一方的に連絡を断ち切ったのは、色んなことを差し置いた上で悪かったとは思う。