僕のミューズ

あかりはそれ以上は何も言わなかった。
背中に反対側に歩いて行くあかりのヒールの音を聞く。


もやがかかった気持ちが、夏の暑さに混じって気分が悪い。

軽く舌打ちをして、煙草を取り出した。

俺のショーのモデルをやりたいと言ったあかり。


一番やって欲しい俺のミューズからは、まだ一言も聞いていないその台詞。


苛立ちなのか焦燥なのかわからない気持ちを抱えたまま、ただ今は、芹梨に会いたかった。



芹梨の笑顔を見たらただ安心する様な気が、そんな気がしていた。

























< 136 / 250 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop